【2026年3月15日】一隅会福岡プレセミナー
一隅会 福岡プレセミナーを終えて
想いを、文化に変える一日でした
先日、一隅会 福岡プレセミナーを無事に開催することができました。
今回のプレセミナーは、5名の発表と1名の総括を通して、予防歯科を“知識”として学ぶだけではなく、なぜそれを目指すのか、どうすれば医院に根づくのか、そして何をもって結果とするのかを、あらためて深く考える一日になりました。
今回、会全体を通して何度も立ち返ったのは、歯科医療の本質とは何かという問いでした。
私たちは毎日診療をしていますが、その先に本当に目指すべきものは、単に悪くなった歯を治すことではなく、患者さんが生涯にわたって口腔の健康を保ち、健全な機能を全うすることです。だからこそ、歯科医療は主訴対応やその場の処置で終わるものではなく、予防・メインテナンス・再評価まで含めて、長い時間軸で患者さんを守っていく医療でなければならない。そんな原点を、強く再確認しました。
そして印象的だったのは、その理想が決して精神論ではなく、MTMという構造と、データという検証を通して現実のものになっていたことです。リスクを評価し、必要な治療を行い、再評価し、メインテナンスへつなげる。この流れ自体は特別な魔法ではありません。むしろ、歯科医療の王道です。ただ、その当たり前を徹底し、さらにアウトカムで振り返るからこそ、医療の質が上がり、患者さんの未来が変わっていく。その積み重ねが、今回の発表の随所に表れていました。
また、今回のプレセミナーでは、予防歯科は一部の恵まれた医院だけのものではない、ということも何度も示されました。
特別な才能があるからできるわけではない。最初から完成されたチームだったわけでもない。継承時はごく普通の医院だったり、一度挫折を経験したり、衛生士ゼロからのスタートだったり、みんなそれぞれ不安や迷いを抱えながら始まっている。だからこそ、これから予防歯科に踏み出そうとする先生やスタッフにも、強く届く内容だったと思います。
さらに、今回あらためて強く感じたのは、予防歯科は“個人技”では続かないということです。
どれだけ院長が想いを持っていても、どれだけ一人の歯科衛生士が頑張っていても、それだけでは文化にはなりません。チームの中に役割があり、ルールがあり、お互いの強みを生かしながら弱みを支え合えること。失敗しても責められるのではなく、次に進むための材料として振り返れること。心理的安全性があり、建設的な意見が言えること。不機嫌や感情の押しつけではなく、大人として自分の機嫌を自分で取ること。そうした一つひとつが、医院の空気をつくり、結果として患者さんに届く医療の質を決めていくのだと思います。
実際、今回の発表の中では、数字の見方もとても印象的でした。
データは誰かを追い込むためのものではなく、評価して責めるためのものでもない。チームが安心して振り返り、改善のヒントを得るためのものです。この視点があるからこそ、人は挑戦できるし、医院は少しずつ予防中心へと舵を切っていけるのだと思います。詰める文化ではなく、育てる文化へ。この転換は、どの医院にとっても本当に大きなテーマだと感じました。
そして、患者さんとの関わりの話も胸に残りました。
予防歯科は、単に説明をして終わる医療ではありません。患者さんの背景を知り、生活を知り、不安や恐怖にも寄り添いながら、一緒に未来をつくっていく医療です。だからこそ、患者さんから「ありがとう」「次も担当してください」「あなたに診てもらうと安心します」といった言葉が返ってくる。その言葉が、医療者を育て、チームを強くし、医院の方向性をさらに確かなものにしていく。今回の会では、そうした予防歯科のやりがいも、非常にリアルに伝わってきました。
また、人生100年時代の歯科医療を考えたとき、予防歯科は単なる経営戦略ではなく、社会戦略そのものだという視点も共有されました。口腔の健康は、全身の健康やQOLに直結します。高齢化が進む今だからこそ、治療中心ではなく、健康を維持し続ける医療へ。歯を削って終わるのではなく、歯を守り続ける医療へ。その価値を、臨床・チーム・データ・エビデンスのすべてから示せたことが、今回のプレセミナーの大きな意味だったと思います。
最後の総括で語られていた
「想いは、仕組みにできる。仕組みは、文化になる。文化は、医院を未来へ連れていく。」
という言葉は、まさに今回のプレセミナー全体を表していたと思います。予防歯科は、一時的な流行ではありません。時間をかけて根づき、世代を超えて受け継がれていくものです。だからこそ、私たち一人ひとりが、それぞれの医院で小さな一歩を積み重ねていくことに意味があります。
私自身、この一日を通して、やはり予防歯科は面白いと、そして本気で広げていきたいと、あらためて強く思いました。
人をすり減らす医療ではなく、人を生かし続ける医療へ。
処置をこなすだけの歯科ではなく、患者さんの未来を守る歯科へ。
そして、その想いを一人の熱量で終わらせず、医院の文化に変えていくこと。そこに、これからの歯科医療の大きな可能性があると感じています。
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。
この福岡での学びと熱量を、それぞれの現場へ持ち帰り、また次の一歩につなげていけたら嬉しく思います。














